記事 01 / 書面
払う前に開く、3枚の書面
申し込みの前に読んでおくべき紙は3枚あります。そのうち2枚は、頼まなくても事業者が渡さなければならないと法律で決まっているものです。残りの1枚は義務ではありません。
説明会でわたしは、何ひとつ聞きませんでした
独学が止まったあと、わたしは有料の講座と教材にお金を払いました。決めるまでにかかった時間は、たぶん三十分ほどです。
その三十分で話したのは、どんな内容をやるのか、どのくらいで身につくのか、いま始めると何が変わるのか。全部、口で聞いた話でした。
途中でやめたらどうなるか。教材の代金は受講料に含まれるのか。休みたくなったときはどうするのか。ひとつも聞いていません。
聞かなかった理由は簡単で、その場に紙が一枚も出ていなかったからです。目の前にあるものからしか、人は質問を作れません。
だからこの帳面は、紙を先に出すところから始めます。読むべき紙は3枚あり、そのうち2枚は法律が事業者に交付を義務づけています。
図の目盛りは1日あたり44ピクセルの等間隔で描いています(8日間の帯=352ピクセル÷8日)。出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」。
契約の前に渡される紙
1枚目は概要書面といいます。消費者庁の説明では「契約の締結前には、当該契約の概要を記載した書面を渡さなくてはなりません」。
つまり、申し込む前の段階で渡される紙です。読んでから決めてくださいという性質のもので、こちらから頼む必要はありません。
ここに書かれるのは、講座の内容と期間、支払う金額の総額、そして中途解約に関する事項です。担当者の口ぶりではなく、条件そのものが並びます。
わたしが払ったときには、この紙は出てきませんでした。当時は、そういう紙が存在することを知らなかったので、催促もしていません。
いま同じ場に戻れるなら、最初に「概要書面をください」と言います。それだけで、その日に決める必要がなくなります。
読むときの順番
最初に見るのは、講座の内容ではなく金額の欄です。総額がいくらで、そのうち教材や入会金がいくらか。ここが分かれていないと、あとの計算がすべて狂います。
次に中途解約の欄。ここが空欄だったり、別紙を見てくださいと書いてあったりする場合は、その別紙も一緒にもらいます。
この紙を受け取った日が、1日目になる
2枚目は契約書面です。消費者庁の説明では「契約の締結後には、遅滞なく、契約内容について明らかにした書面を渡さなければなりません」。
この紙がいちばん重要なのは、内容そのものよりも日付のためです。クーリング・オフの8日間は、この紙を受け取った日から数え始めます。
契約した日からではありません。申し込みの日と書面を受け取った日がずれることは、実際にはよくあります。
受け取ったら、封筒でも表紙でもいいので、その日の日付が分かるものを一緒に残しておきます。あとから思い出すのは難しいからです。
なお、8日を過ぎてもやめられなくなるわけではありません。中途解約という別の道があり、そちらには期限がありません。
| 概要書面 | 契約書面 | |
|---|---|---|
| 渡されるとき | 契約の締結前 | 契約の締結後、遅滞なく |
| 頼む必要 | なし(義務) | なし(義務) |
| 日付の意味 | 比べるための材料 | 8日間の起算日 |
| 残しておくもの | 金額の内訳 | 受け取った日が分かるもの |
義務ではない紙こそ、頼んで出してもらう
3枚目は、事業者が独自に作っている返金規定や休会の規定です。これは法律上の交付義務がありません。だからこそ、こちらから頼む必要があります。
法律が決めているのは上限だけで、それより消費者に有利な条件を事業者が用意することは自由です。実際、返金保証を掲げている講座もあります。
ただし、広告に書かれた返金保証と、法律上の解約権は別のものです。保証の条件を満たさなくても、法律の側の権利まで消えるわけではありません。
頼み方は難しくありません。返金と休会について書いた紙はありますか、と聞くだけです。無いと言われたら、それも一つの答えになります。
- 01
休会できる期間の上限。何か月まで止められて、その間の月謝はどうなるか。
- 02
受講期限。買った回数分を、いつまでに使い切る必要があるか。期限のない回数券は、期間の条件の数え方が変わります。
- 03
担当者や教室が変わったときの扱い。指名していた場合に、変更を理由に解約できるか。
- 04
返金の振込先と、振り込まれるまでの日数。ここが書かれていない規定は、実務が固まっていない可能性があります。
3枚を、この順で集める
順番を決めておくと、その場の勢いに流されにくくなります。わたしが次に払うときは、この順にします。
まず説明を聞く前に、概要書面と返金規定を先に見せてもらえるか尋ねます。ここで断られる場合、その理由も含めて材料になります。
次に、その2枚を持ち帰ります。読む場所を変えるだけで、同じ文章がまったく違って見えます。これはわたし自身が経験しました。
最後に、契約したら契約書面を受け取り、受け取った日付を控えます。ここまでが、払う前後にやることの全部です。
この3枚がそろって初めて、次の記事から先の話が意味を持ちます。条文の中身より、まず紙を手元に置くことのほうが早い。
先に断っておくこと
ここに書いた書面の義務は、その契約が特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たる場合の話です。当たらない契約には、この義務はありません。当たるかどうかの見分け方は記事02で扱います。
個別の契約がどちらに当たるかは、この帳面では判断できません。お住まいの自治体の消費生活センター(消費者ホットライン 188)が相談を受け付けています。
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